風と幻灯

家族のこと、猫のこと、日々の暮らし。
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えんちゃん④

翌朝、Tさんに「無事、捕獲ができました」と電話を入れました。

Tさんは、手術の予約はしてあるので、そのまま病院に連れて行ってもいいのだけど、捕獲器は小さくて猫が身動きがとれず可哀想だから、うちに寄ってくれたらケージに移し変えますよ。と仰ってくださいました。

わたしは、先日、えんちゃんを取り逃がしたことがあったので、また逃げちゃったら・・・餌場から遠い場所で・・と不安でしたが、Tさんを信じてお願いすることにしました。

Tさんの家に着くと、Tさんは小型のケージを用意してくださり、それはそれは手際よく、えんちゃんを捕獲器からケージに移し変えました。

そしてえんちゃんを見て、「この子、かわいい顔してるねぇ」と言って、わたしは、すごく嬉しくて、「そうなの。すっごく可愛いんです!」と答えると、Tさんが笑いました。

そして、えんちゃんのお腹の様子を見て「ん・・?」と首をかしげ、「座ってると、お腹、分からないねぇ?」と言い、「臨月とかになるとね、座ってても、お腹が横にはみ出して見えるんだけどなぁ・・」と言いました。
わたしが「でも、後姿とかを見ると、つちのこみたいに、お腹が横に張り出してて、それで、おっぱいがすごく大きくなってるんですよ」と言うと、また首をかしげて「おっぱいがそんなに大きい?それ・・産後じゃないかなぁ・・?」と。

わたしは本当にびっくりして、「え?生まれてる可能性があるのかな?!どうしよう。もしも産んですぐなら、子猫たち、どうしてるんだろう・・・」と言うと「んー・・まぁでも、もう捕まえちゃったしねぇ・・・」と言い、「でも、産んですぐなら、そんなに出歩かないと思うし・・」と続け、「3ヶ月くらいの子猫がいるんですけど、その子たちがまだおっぱいを吸ってる可能性もあるかな?」と聞くと「あぁ、その可能性はありますよ。お母さんがもうダメってやらない限り、5ヶ月くらいでもおっぱいを吸ってる子はいるから」と言いました。

あぁ、どうか、えんちゃんは産後で、そして生まれた子たちが、あの、3ヶ月くらいの猫たちでありますように!!
わたしは、祈る気持ちで、動物病院に向かいました。


動物病院につき、Tさんの紹介であることをつげ、入院と手術の手続きを始めました。
病院は、評判がよいだけあって、とても混んでいました。

まず、野良猫用の用紙が渡され、名前や月齢を記入しました。
名前は「えん」と書き、月齢は不明としました。
性別は女の子であること、不妊手術を希望すること、その際、妊娠していたら、堕胎をするか、手術を中止するかの項目もあり、わたしは、「どうか妊娠していませんように・・」と祈りながら、堕胎の項目をチェックしました。

そして、血液検査をしてもらうことと、7種のワクチンを接種してもらうこと(白血病が陰性の場合7種、陽性だった場合は3種になるそうです)駆虫もしてもらうこと、手術をした証として耳カットをしてもらうことなどにチェックをして、さらに、ワクチンのアレルギーが怖いので、接種前には抗ヒスタミンかステロイドの薬を投与して欲しいと告げました。

術後が心配だったため、1日入院を延泊させてもらうことにもしました。


先生が出てきて、えんちゃんのお腹をチラリと見たので、「おっぱいが大きいんですが・・・」と言うと、先生も、Tさんと同じように「産後じゃないかなぁ・・・?」と言いました。


えんちゃんを動物病院へ預け、家に戻ると娘が心配そうに出てきたので、「もしかしたら、えんちゃん、妊娠していない可能性があるよ・・もしかしたらだけど」と言うと、「そうだといいねぇ!」と娘が言って、本当に、そうだといいねぇ!とわたしも思いました。


翌日の昼間、えんちゃんの手術が行われました。
夕方に動物病院から電話があり、白血病もエイズも陰性だったと聞き、とても嬉しく思いました。
同時に、両方ともマイナスなら・・・うちで・・・と、また、わたしは往生際悪く、考えていました。

夫が家に帰ってきて、えんちゃんの血液検査の結果を伝えると「それで、妊娠はしてなかったの?」と聞くので、「それは聞いてない。明日の受け取りの時に教えてくれるんだと思う・・」と答えました。
そして「ねぇもしも、えんちゃんが妊娠してて、それで堕胎してたら・・うちで、罪滅ぼしに飼ったり・・出来ないよねぇ・・・・?」と言うと、しょうがないなぁ・・と言う顔をしてわたしを見ていました。
「でも、それがえんちゃんに幸せなのかどうか、わかんないもんね・・」と言うと「うん。わかんないよね」と答えました。


えんちゃんの手術を決めたとき、お世話になった、わんにゃんネットワークのI田さんにメールをして、そのお返事を頂いていました。
I田さんも、堕胎か生ませるかは、いつも本当に悩むのだと書かれていて、病院によっても方針は違いますよと。
それから、猫は、どうしてもひとに懐かない子がいる。えんちゃんは、暖かいおうちにいても、ごはんをたっぷりもらっても幸せじゃない子かもしれないですよとも。

そういえば以前、タキ、ニケ、ポロを貰ってきた屋久島で、ホテルのOさんと、たくさんの野良猫を見ながら、こんな話をしたことがありました。
「猫は、人と居て幸せな子と、そのどちらにも転べる子。そして、どうしても人と居れない子がいると思うんですよ」とOさんは言って、わたしは、タキを見ながら「わたしもそう思います。タキちゃんは人と居て幸せな子だと思うんです」と答えたのでした。

そのときは、人と居ても幸せじゃない子がいるというのは、実のところ、よくわかっていませんでした。

でも、今なら、すこしだけわかるように思います。



翌々日になって、えんちゃんを迎えに動物病院へ向かいました。

看護士さんが「とーっても、ハイパーな子ですね!」と笑いました。
わたしは、またまた往生際悪く「やっぱり、家猫には向かない子ですよねぇ・・?」と聞くと、困ったように笑いながら「かもしれないですねぇ」と答えました。

無事、手術もワクチンも終わり、「結局、妊娠はしてなかったんですか?」と夫が聞くと「はい、してませんでしたよ」と答えてくれました。
「だいたい生後1年くらいの子で、産後だそうです。産後すぐと言う感じではないようですよ」とも。

あぁ、神様・・・。



えんちゃん・・・
あぁ、もう、えんちゃん・・。

あんなにおばちゃんを悩ませて!!

えんちゃん!

もう、本当に、良い子!!!



今度は、嬉しくて、涙が出てきました・・・。



そして、もう二度と、こんな思いをしたくない。と、強く思いました。



そのまま、えんちゃんを車に乗せ、元の餌場にえんちゃんを連れて行き、そっとケージの扉を開けました。

えんちゃんは、サッとケージを抜け出して、一度わたしを振り返りました。

もう、きっと、公園にはきてくれないんだろうな・・と、わたしは、逃げていくえんちゃんの後姿を見つめていました。


車に戻ろうとすると、えんちゃんが、安全距離からわたしをじっと見つめていました。
車の中に居た夫に「えんちゃんが見てるよ」というと、「どれ・・」と車から降りてきて、えんちゃんの方に歩き出しました。

えんちゃんは、夫が近づいていくと、ふいっと身を翻して、フェンスの向こうに消えていなくなりました。



えんちゃんを見たのは、これが最後でした。




その日の夜も、次の日も、その次の日も、えんちゃんは、餌場にやってきませんでした。



毎日、毎日、昼も夜も、えんちゃんを探して餌場に通いました。


けれど、えんちゃんは、すっかり姿を消していました。




もしかしたら、傷が悪いことになって、どこかで死んでしまっているのかもしれない・・。
そう思って、心配で心配でたまりませんでした。


残された子猫たちは、今までえんちゃんのおっぱいを吸っていたのでしょう。
餌場に今までは警戒して近寄らなかったのですが、ここ最近は、鳴いてエサを欲しがるようになりました。

えんちゃんが、消えたのは確実のようでした。


きっと、この場所は危険な場所だと、えんちゃんは思ったのかもしれません。

わたしが、えんちゃんの場所を奪ってしまったのだと思うと、本当に苦しかった。




えんちゃんが姿を消してから1週間後、飼い主のいない猫対策のセミナーが成城で行われ、それに参加してきました。

そこで、相談FAXをしていた動物愛護団体さんの主催の方とお話しすることが出来ました。
そこには、Tさんもコメンテーターとして参加しておられて、えんちゃんのことを話すことができました。

実は、リターンした日から、えんちゃんを見かけないのです。と、言うと、そういうことは時々あることで、特に子猫が居る場合、避妊手術が終わった親猫は、餌場を子猫に譲る場合があるのだと教えてもらいました。
それでも、そう遠くには行って無いと思うので、心配なら範囲を広げて探してみると良いかも?とアドバイスも頂くことができました。

どうか、あまり遠く無い場所で、元気で居て欲しい・・・。

いつか、ふらっと戻ってくる日が・・あることを・・祈って・・・。




正直わたしは、まだ、何が正解なのか、わかっていません。
たぶんずっと、「答えは無いよ」と知りつつも、悩み、探し続けるんだと思います。
だから、本当は、信念の無い人間は、こんなことに関わっちゃいけないのかもしれないとも思います。
でも、わたしはかかわってしまった。
これが、正解だったのか、間違いだったのか、それすらわかりません。

わたしは、わたしのしたことは、明らかに、えんちゃんの猫生を変えてしまいました。
えんちゃんが、居なくなってしまったのが、なによりの証拠だと思います。

それに対して、後悔しているかと聞かれても、わたしは、それすら答えることが出来ないのです。

飼い主の居ない猫の不妊手術をすると言うことが、どういうことなのか。
あれだけ悩んでも、さっぱりわかりません。
それでも、そういう活動を地道にしていく上で、野良猫の殺処分などが減っていくことは紛れも無い事実であることも確かなのです。
それを証明してくれている方々が、たくさん居ます。
千代田区などでは、殺処分0を何年も続けています。
それも、コツコツと活動を続けてきた成果なのです。


増やさない。産ませない。人間が、決めていいことなのか、たくさんのひとが悩むことでしょう。
わたしも、そのひとりです。

娘が言いました。
「野良猫を作ったのは人間だよね。だから、人間がなんとかするしかないんだよね」と。

わたしがしたことを、非難する方もいるでしょう。
ひどいことをしてと思う方もいるでしょう。
「よいことをした」と言ってくれるひともいるかもしれません。

でも、ひとがどう思うかは、もう、いいです。

そういうことじゃなくて、ただ、関わってしまったんです。


自分なりに、なんとかしたいと思ったことの結果だったんです。



えんちゃんの居た餌場には、あと、少なくとも、3匹の子猫がいます。

たぶん、半年くらいの、えんちゃんにそっくりな黒白の猫が1匹。
いつもおなかをすかせているので、娘と、「ハングリーとごはんの、はんちゃん」と呼んでいます。

この子が、どうやら女の子なので、この子の手術も近いうちにするつもりです。
確実に、妊娠する前に、なんとかしようと思っています。

それから、3ヶ月くらいのキジの子猫が2匹。
性別は分かっていません。

えんちゃんが産んだ子のはずです。


月齢に達するのをまって、手術しようと思っています。
この子達に関しては、本当は、いま、一番可愛いときなので、馴れてくれたら、里親を見つけたい気持ちでも居ますが、難しいだろうなと思っては居ます。

このファミリーだけは、守って行きたいと思っています。


猫が増えて、迷惑と感じるひとが増えれば、猫にとっての受難があることは間違い無いと思うので・・。
そうなる前に、わたしなりのかかわり方をしていきたいと、今は、そう思っています。


融通のきかない、不器用な人間は、命に関わっちゃダメだね。って、思ったりもしますけどね・・・。

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4 Comments

サ・エ・ラ says..."No title"
momeさん。お疲れさまでした。
と言っても、きっとまだ終わった訳じゃなくて、
えんちゃんの子たちを見守っていく日々が続くんでしょうけど・・・。
答え、出ないよね。
多分数限りないケースがあって、それごとに「最善」も異なるのかな。
私の方はね、意外とけっこう牧歌的な状態で。
田舎町のせいもあるんでしょうね。
またおたよりするかもしれないです。
とにかく、心身共にお疲れさまでした!e-466

2012.11.12 21:40 | URL | #DDJALrL2 [edit]
mome says...">to サ・エ・ラさま"
本当に、答え、出ないよねぇ・・。
人間は猫じゃないし、猫も人間じゃないから、何が幸せなのかなんて、分からないもんね。

でも、昨日もエサやりさんの家の人と話してたんだけど、えんちゃんの兄弟も、ベイビーたちも、殆どが、カラスに食べられてちゃったって聞いてさ・・。
そういう無残な最期を遂げるのが殆どなんだって思うと、増やさないようにしたいなって、やっぱり思ったかなぁ・・。

環境にももちろんよるよねぇ。
うちの方も、のんびりした土地ではあるけど、大きな道路とかがたくさんあるから、事故も心配かな。
あと、ちょっと離れた近所では、公園猫たちへの虐待があって、塩酸だか硫酸だか分からないけど、かけられて、たくさんの猫たちが怪我をしたり、命を落としたりしたんだよ。
そういうのも、つらいねぇ・・。
人間って、ほんと身勝手で、ひどいよね。

とりあえず、えんちゃんファミリーのために、出来ることをがんばっていくよ~。

また、おたよりちょうだいね(笑
2012.11.14 14:06 | URL | #- [edit]
夕霧 says..."No title"
よかったあ~。。。
えんちゃん、妊娠してなくて本当によかったです。
その後のことを読むと、手放しでは喜べないけど・・・・・・・・。
えんちゃん、どこかで生きているといいですね。
とりあえず命はありますように!!
そしてまた、moneさんにお顔だけでも見せてくれたらいいな。
えんちゃんの子供たちのことも、よろしくお願いしますね。
・・・って書くと、moneさんに丸投げしてるみたいで嫌なんですけど。。。
ご近所さんだったら、お手伝いできるのに。。。
2012.11.14 15:24 | URL | #KKhd1Ueo [edit]
mome says...">to 夕霧さま"
もう、ほんとうによかったですよーーー!
野良猫に関わるなんて経験も初めてなのに、しょっぱなから、ヘビーな思いをさせてもらいました(泣笑
でも、今回のことのおかげで、避妊手術とかの大切さを学んだかなぁ・・。
あんな思いを2度としないで済むように、そうなる前に、なんとかしていきたいと思っています。

そうなの。
えんちゃんが姿を見せなくなってしまったので、本当に心配で心配で哀しくて・・。
わたしにとって、とっても特別な野良猫ちゃんだったから・・。
いつかひょっこり、帰ってきてくれると嬉しいなぁ。

えんちゃんファミリーのことは、お任せください!(笑
なんだかんだ言っても、えんちゃんの子たちだと思うと、本当に可愛くてね。
今も、会って来ました。
家の子にも滅多にあげないおやつまであげてきちゃいました(笑
お気持ちありがとう!こうして応援してくださるだけで、本当に嬉しいですよ^-^
2012.11.14 15:35 | URL | #- [edit]

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