風と幻灯

家族のこと、猫のこと、日々の暮らし。
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えんちゃん③

えんちゃんの件、まだ途中だったので、コメントのお返事をする前に、記事を書いてしまうことにします。


えんちゃんを捕獲して、逃げられたその日の夜、夫はお弁当を買って帰ってきてくれました。
とてもとても、わたしが通常の家事などをする気分になれないだろうと知ってのことでした。

お弁当は、わたしの大好きな、シウマイ御弁当でしたが、半分も食べないうちに、すべてもどしてしまいました。
胃が、食べ物を受け付ける状態になっていなかったようでした。

その夜、わたしは夫と一緒に公園に出かけ、いつものようにえんちゃんを待ちました。
えんちゃんは、警戒しつつも公園にやってきました。
でも、以前のように近寄ってきてはくれませんでした。

なので、フードをお皿に盛って、すこし離れてえんちゃんを見守りました。

えんちゃんは、時々、わたしたちの様子を見ながら、それでもごはんを平らげてくれました。


どうしたら良いのか、ただただため息と涙だけが次から次へとあふれ出て、わたしは本当に絶望のふちにいました。

家に帰ってからも、ずっとパソコンで、いろんな方のブログなどを読み漁りました。
野良猫の幸せってなんだろうって、ずっとずっと考えていました。

1日過ぎ、2日過ぎ・・。
えんちゃんは、少しずつですが、以前のように、わたしの近くまで来てご飯を食べてくれるようになっていました。
えんちゃんのお腹を何度も眺めて、「あれ?ちいさくなってる?気のせい?やっぱり大きい?」と思いながら、大きくなっているおっぱいを見ながら、また、バカみたいに何度も何度も泣きました。

娘が、「このまま、生まれちゃえばいいのに・・・」と呟いて、わたしも心のどこかでは、そうなってしまえばいいのにと思いながらも、これから来る冬のことを思うと、手放しでそう思うことも出来ず、「ダメだよ・・生きていけないよ・・」と答えるのでした。

相変わらずわたしは、一日中パソコンの前に張り付いて、答えを探していました。

同時に、いろんなことを考えました。

夏ごろの話しになるのですが、タレントの石田純一さんの奥さんの、東尾理子さんが妊娠されて、出生前診断のクアトロテストでダウン症児が生まれる確立が82分の1あるというニュースを見たとき、わたしは夫に「82分の1の確率なんだって」と言うと、夫が「それは・・結構高いな・・」と言って、わたしは、「え?高い?低いじゃなくて?」と返したことがありました。

夫は「高いだろ?」と言ったのですが、我が家に照らし合わせて考えてみると、我が家では、筋ジストロフィーの子が生まれる確立は4分の1なので、82分の1なんて、もうほとんど無いくらいに考えてもいいことだと思ったのでした。

「それはそうかもしれないけど、0と比べたら高いだろう?」と夫がまた言うので、「リスクが0なんてことは、どんな妊娠でもありえないよ」と返したのでした。

そしてまた暫くしたころ、ダウン症などの出生前診断が、血液検査のみで出来ると言うニュースが流れ、大きな物議をかもしました。
わたしはこのときも、とてもとても悩みました。
もちろん、妊娠しているわけでも無いし、これからの予定も無いのですが、命を授かるということ、生まれるということ、命の選別、現実に障がいを持った子を育てていく人生、などについて、大きく悩み、理想を言えば、すべての命にウエルカムと言いたいと思うのですが、実際に自分が体験した悲しみや苦労を思うと、手放しでそれを言うことも出来ず、そして、そんな自分に苛立ち、嫌悪もしました。

でもこのことは、簡単に答えが出せる問題じゃないと思っているし、ずっと悩みながら考えながら生きていくんだろうなと思っていました。

わたしには、今回のえんちゃんのことと、この問題が、かぶってみえるような気もしていました。

もちろん、ひとと猫。
しかも野良として生きていく猫のことです。
違いはあるでしょう。
でも、同じ命として、わたしは悩み、考え、苦しみました。

けれど、えんちゃんに関しては、ゆっくり考えている時間がなかったのです。



3日目の夜、わたしは決断を下しました。


夫の部屋に行き、「決めたよ」と言い、「えんちゃんを再度捕獲して、堕胎も含めて不妊手術をしてもらう」と言いました。
「再捕獲は難しいと思うから、明日になったら保健所に電話をして、ボランティアさんを紹介してもらう」と言いました。

夫は「わかった」と短く答えて、「よく決めたね」とわたしの背中を撫でました。

その夜は、また、この数日続けていたとの同じように、パソコンで愛護団体さんやボランティアの方のブログを何度も読み返し、相談していたわんにゃんネットワークのI田さんにメールをしたりして過ごしました。

決めるきっかけになったのは、あるボランティアさんのブログでした。

野良猫たちの幸せを考えて、その地に住むひとたちのことも考えて、活動されている方でした。
捕獲し、病院へ連れて行った猫が妊娠していて、泣きながら堕胎をお願いしたこと、こんなことを続けて、きっと自分は地獄に落ちると思ったこと、それでも少しずつ成果が現れて、殺処分が今年は去年に比べてこんなに減ったという結果が出たことなど、苦しみながらも一生懸命に猫たちのことを思っている姿が、とてもわたしには身近に感じられて、なんて言ったらいいんだろう・・うまくいえないんですが、過信しすぎていない・・と、でも言うのでしょうか・・今のわたしには、それしか、受け入れることが出来なかったんです。


それでも、その夜も、わたしは布団をかぶって、泣きに泣いて、「どうしたの?」とやってきたポロを抱きしめて、ポロちゃん(えんちゃん)ポロちゃん(えんちゃん)ポロちゃん(えんちゃん)と何度も名前を呼び続けました。



翌朝、保健所に電話を入れ、ボランティアの方を紹介していただく運びとなり、お電話で相談をしてみると、その方は、なんと、そのブログの方でした。
お電話で、妊娠している可能性があることなどを告げ、自分が、本当に正しいことをしているのかわからないのだと言うと、「それはね、正解は無いんです。考えても考えても答えは出ないんです」とキッパリと仰いました。
そして、ご自身の経験をお話ししてくださり、「私はね、必要悪だと思っています。不妊手術だって、必要悪だって思ってます」と言いました。

「必要悪」という言葉は、わたしの中に、すんなり落ちて来ました。

えんちゃんを病院に連れて行ったとき、先生が、こういう活動をして(堕胎を含めた不妊手術をして)、みんなからも、よいことをしたと思ってもらえますよ。と、いうようなことを言ったのですが、その時、わたしは、その言葉に、とてもひっかかって、反発を抱いていたのです。
わたしは、ちっとも良いことをしていると思っていないから。
だけど、いろんな現実があって、そうせざるを得ない状況に、世の中はあるんだと思っていたから。

必要悪か・・そう思って、自分も地獄へ落ちるのかなぁって思いました。
地獄はヤダな。
だって、そこには猫が居ない。



ボランティアのTさんと相談して、翌々日に捕獲器をお借りする手はずが整いました。
病院で借りていた捕獲器は返却したあとだったし、その捕獲器は、いたちなどを捕まえる用のもので、猫が入ったときに怪我をしたりする可能性があると聞き、Tさんが持っている捕獲器をお借りすることになりました。

病院は決まってるの?と聞かれ、その「ネットに入れば血液検査も出来る」と言ってくれていた病院へ行って見ようかと思うのだけど、と伝え、もしも、堕胎がえんちゃんにとってリスクが高いようなら、堕胎をやめて産ませたい・・と思っているのだと言うと、Tさんは、「堕胎も出産も結局リスクは同じなんだよねぇ・・」と言い、野良で懐いていない子の出産は難しいのだと教えてくれました。

そこでわたしは、決意をあらたに、手術を決め、Tさんがよく利用しているという動物病院を教えてもらうことにしました。

そこは、野良猫への理解も深く、低料金で、手術も埋没縫をやっているので抜糸の必要がないとのことでした。
家に帰ってからネットで調べてみると、とても評判の良い病院でした。

再捕獲は難しいと思うけど、がんばって。と、Tさんから捕獲器の説明を受け、そのお借りした晩に、小さく刻んだししゃもを入れた捕獲器を持って、わたしと、夫と、娘の3人で公園に出かけました。


公園の、いつもエサをやる場所の近くに捕獲器を置いて、わたしたちはえんちゃんを待ちました。
数分経ってもえんちゃんが姿を見せなかったので、エサやりさんの家の近くに行き、チュチュチュと舌を鳴らすと、えんちゃんが出てきて「あ、ごはんのおばちゃん!」と言う顔で近寄ってきました。

わたしは、舌を鳴らしながら公園にえんちゃんを誘導し、そして、捕獲器を過ぎて、すこし離れた場所に座りました。

えんちゃんは、警戒しながらも、捕獲器の前にすこしだけ撒いたししゃもを食べて、ゆっくり捕獲器に入ってきて、そして、ガシャンと小さな音がして、えんちゃんを閉じ込めました。

急いで捕獲器に近寄り、カバーをかけました。
カバーをかけないと、中で暴れて、怪我をする可能性があるからです。

えんちゃんを連れて家に帰り、最初は玄関前のポーチに捕獲器を置いていたのですが、すこし肌寒い夜ということもあって、きっといつもは、えんちゃんは、子猫たちと一緒に丸くなって暖をとって眠っているに違いないと思い、寒いだろうからと、夫の許しを得て、お風呂場に捕獲器を置きなおしました。

覗いたら、きっとえんちゃんが怖がると思ったのですが、ショックで死んでしまっていないか心配で、一度だけ、カバーをすこしずらして、えんちゃんを覗き込みました。

えんちゃんは、目を真っ黒にして、たぶん怯えて、わたしをじっと見つめ返しました。
「おばちゃん、なんでこんなことするの?」と、その目が言っているように思えました。

なんでだろう?なんでだろう?
ごめんね、ごめんね、えんちゃん・・・。

罪悪感でいっぱいでした。



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