風と幻灯

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フラメンコ

「あなたの魂と踊りの時間に感謝します。日本に来てくれてありがとう。あなたのファンより」

そう書いたカードを、フリルのようなピンクの縁取りのある、一本の大輪のバラに添えた。

名前は書かなかった。

そのバラを贈ったのが、「わたし」であることに意味はないと思ったから。




7月31日。
フラメンコを観に、夫とわたしは日比谷の野外音楽堂まで出かけてきた。

わたしは、音楽にも、踊りにも、まったく疎いので、詳しいことは分からないし、語る言葉も知識も持ち合わせていない。

けれども、それを観たときに、わたしの心は震えた。
それ以上のことなんて必要ないんじゃないかとも思えた。


7月の初め、夫が「フラメンコ観にいかない?」とわたしを誘った。

フラメンコは、好き。だと思う。

「うん。いいね、行きたいね」そう答えると、夫が「スペインからもゲストが来るみたいだよ」と教えてくれた。
小松原庸子舞踊団「真夏の夜のフラメンコ」
さっそく、HPにアクセスしてみると、そこには、わたしが、わたしたちが、一方的に良く知っている名前があった。

<アントニオ・カナレス>


「カナーレス、来るみたいよ!!」わたしが言うと
「え?本当に?じゃぁ、絶対観ないとね」と夫が答えた。


アントニオ・カナーレス。
まさか、この目で、本物を見る日が来るとは思わなかった・・・。




わたしは、映画が好きだ。

あまり、ジャンルにはこだわらない方だと思う。
静かな映画も、楽しい映画も、哀しい映画も、観る。
あ、怖い映画はあまり観ない(笑

「趣味、映画鑑賞」と、言えるほど、たくさん観てきたわけじゃないと思うけど、それでも、何百と観た映画の中で、わたしが一番好きな映画。

それが<VENGO/ベンゴ>

もう、7、8回、観ていると思う。

はじめて観たときから、強く引き込まれて、何度も繰り返し観るたびに、毎回同じように泣いて、新しいことに気づく。
どうしようもなく、好きな映画。


『「ベンゴ」は単にフラメンコを扱っているのではない。映画自体が本能的にフラメンコなのだ。』と、監督である、トニー・ガトリフは、言っている。

http://www.cinemarise.com/theater/archives/films/2001008.html


この、映画、<VENGO>の、主人公、「カコ」を演じたのが、他でもない、フラメンコダンサーである、<アントニオ・カナーレス>そのひとであった。


しかし、この映画の中で、アントニオ・カナーレスは、一度も、踊りを踊ることがない。
ひとつのステップも踏まない。

だけど、アントニオ演じる「カコ」はフラメンコそのものだと思う。




この映画にほれ込んで、アントニオ・カナーレスにほれ込んで、彼の、フラメンコが収められているDVDを買った。

わたしの「知っている」フラメンコではなかった。

そして、素晴らしかった。



その、踊りを、彼を、観ることが出来る日が来るなんて・・・・・。




当日は曇り空。
今にも降り出しそう。


夫と二人で日比谷に向かう。


花屋で、バラを一輪買う。


入り口で、花を預けるところがあったので、バラにカードを添えて置いてきた。



最初に舞台に登場したのは、主催の小松原庸子さん。

今回、ゲストで参加したアーティストは、日本のために、ボランティアで駆けつけてくれました。と、挨拶がありました。

舞踊団は、杉並区にあり、杉並区は南相馬市と姉妹都市だそうで、被災された方々への支援のための、チャリティー公演だそうです。
収益の一部と、募金のすべてが南相馬に送られるとのことでした。


そして挨拶の後、盛大な拍手が起こり、そのあと、舞台が幕を開けました。



いくつかの「知っている」フラメンコを観たあと、彼の出番になりました。


この日、アントニオ・カナーレスが踊った踊りは「シギリージャ」


嘆きの踊り。


彼のステップが、手が、表情が、体中が、被災した日本を思い、憂う。

なんかもう。

涙が出てきた。



踊り終えた後、彼が顔を両手で覆い、その後、胸に両手を当てて敬意を表すと、わたしの胸も、いっぱいになった。

わたしも、胸に手を当てて、彼の魂を感じた。


わたしには、フラメンコや踊りや歌の知識なんて、これっぽちも無いけれど。
魂を感じることは出来る。



そして最後に観た、<クリスティーナ・オヨス>
高名なバイラオーラであるとのこと(わたしは、もちろん、知らなかった)

彼女もまた、本当に素晴らしかった。

日本のために、彼女が作った踊り。
鳥肌が立った。




そして、この素晴らしいフラメンコの舞台を終えて、わたしと夫は、トニー・ガトリフの言った言葉を真に理解することになった。


『「ベンゴ」は単にフラメンコを扱っているのではない。映画自体が本能的にフラメンコなのだ。』


わたしと夫は、「あれが、わたしたちのフラメンコの理想形なのだ」と結論付けた。



夜、帰宅してから、前日に同じ舞台を観にいった娘と、どれほど、アントニオが素晴らしかったかをたたえあい、そして、3人で、また<VENGO>を観た。


娘は2度目。
夫は4回目くらい?

また、泣いて、思って・・・。



VENGO鑑賞会の後は、VENGO討論会に移ったのだけど、それはまた、いずれ。










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4 Comments

norori* says...""
フラメンコ、、深いですねぇ(´ω`*)
何度も観た映画の主人公が来日、踊る・・・
なんだかとってもすごいです!!!
1輪の薔薇・・・すっごく素敵です♪

動画もあとでじっくり見てみたいと思います♡
2011.08.04 10:12 | URL | #- [edit]
アビmama says...""
素敵な経験をなさいましたね
フラメンコは飲食店のショーで観たぐらいかしら・・・
一度本場で観たいと思っています

それにしてもいつも羨ましいのはmomeさんと旦那様のご関係
これから先私は価値観の合う方と巡り会えるのかしら・・・
歳も歳ですし考えてしまいます
2011.08.04 17:36 | URL | #0ej1hy.w [edit]
mome says...">to norori*さま"
本当に、夢のようなひとときでした^-^
憧れのひとが、目の前で踊りを踊っていて、それが、被災した日本を思っての踊りで・・。
もう、本当に素晴らしかったです!

動画は、VENGOのフラメンコシーンのものばかりです。
興味があったら是非^-^
2011.08.05 14:11 | URL | #- [edit]
mome says...">to アビmamaさま"
たぶんもう、一生、アントニオ・カナレスの踊りは、生で観られないんじゃないかなぁ~と思っていたので、本当に嬉しかったです^-^

今度、フラメンコを観ながら、食事でもしようか~と夫とも話していました。

わたしと夫は、たぶん、一緒に暮らしていく中で、どんどん似てきたんじゃないかなぁって思います(笑
大事なところは、もともと近かったのだと思うけど、それ以外は、まったく違う二人だったんじゃないかなぁ。
アビmamaさんったら!まだ人生半分しか過ぎてないんですよーーー!(笑
わたしの大好きな友達も、つい1年ほど前に、素敵なひととめぐり合ったし、まだまだこれからですよっ。
2011.08.05 14:17 | URL | #- [edit]

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