風と幻灯

家族のこと、猫のこと、日々の暮らし。
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言葉にしなくては①

さて、何から書きましょうか。

まず、息子のことを書きましょうか。

以前から、わたしの書くものを読んで下さっている方は、もうご存知のことと思いますが、わたしの息子には、先天性筋ジストロフィー福山型という病気があります。

これは、筋肉の病気で、簡単に言えば、筋力が生まれつき弱く、年を重ねるごとに、どんどん筋力が低下していく病気です。
多くの患者さんには、知的障がいもあります。
うちの息子のことで言えば、彼は今、19歳ですが、知的にはおよそ、小学校の低学年の子くらいです。

筋力が弱い。と、いうことで、みなさんは、どんな状態を想像するでしょうか?

まず、息子は、立つことができません。
もちろん、あるくこともできません。

このくらいのことは、たぶん、みなさんも想像できるのではないでしょうか?

息子が小さいころ、1歳になったくらいの頃、彼は、「おすわり」をすることが出来ました。
床の上で、足を崩して、両手で突っ張って支えにし、ちょこんと座っていました。

ハイハイをすることは出来ませんでした。

だから、わたしたちは、きっと、ずっと、寝たきりなのかもと思っていたので、彼が座ることが出来るようになって、本当に嬉しく、喜びました。

それから少しして、彼は、両手の支えが無くても、座っていられるようになりました。
座った姿勢で、おもちゃを取って遊んだり、引き出しをあけて、いたずらをするようになりました。
そして、じょうずにお尻と手を使って、「いざり」をするようになりました。
立って歩くことは出来なくても、いざりによって動き回り、彼の世界は広がって行きました。

2歳、3歳、4歳、5歳。
どんどんと新陳代謝は進み、どんどんと筋肉もついてきて、彼は、スプーンやフォークを使って、自分で食事を食べれるようにもなって行きました。
コップも上手に持ち上げて、自分で飲み物を飲みました。
おもちゃのピアノを演奏したり、タンバリンをたたいたりしました。

「けいしく~ん!」と呼ぶと、「は~い」と答えて手を上げました。

5歳のときに、はじめて電動の車椅子を作り、とっても上手にそれを動かしました。
レバーを押して、どこまでも進んで行きました。
公園では、小枝を乗り越えて遊んだりもしました。

7歳になって、今度は自走式の車椅子を作りました。
自分の力で動かすことのできる車椅子です。
スウェーデン製の、とってもかっこよくて、軽い車椅子でした。
わたしも、彼も、とても嬉しくて、時々、一緒に手を繋いで「歩き」ました。
手を繋いだまま、わたしが彼の手を引いて歩くと、軽い車椅子は、彼を乗せて、一緒に動いてくれたのでした。


8歳、9歳、10歳。
彼の筋力は、徐々に低下していきました。
成長と、低下のバランスが、崩れてきたのです。
もっと小さいころは、成長する割合の方が、低下速度よりも大きかったので、彼の筋力も少し伸びていたのですが、成長が緩やかになるにつれ、彼の筋力低下の速度の方が、勝ってきたためです。

自走式の車椅子で、走ることは出来なくなっていきました。

スプーンやフォークは、彼が持ちやすい、軽いプラスティックの物に変えました。
コップはもう、持ち上げることは出来なくなって行きました。

お座りも、もう、バランスをとることが難しくなり、車椅子に腰掛けることしかできなくなりました。

車椅子の背もたれを高くしないと、彼の体は車椅子から転げ落ちてしまうようになりました。

11歳、12歳。
新しい、背の高い車椅子を作り、胸のベルトで固定して、彼の姿勢を支えました。
彼が、食事を自分で取ることが出来るようにと、学校の先生方といろいろと試行錯誤を重ね、彼の口元近くに食器が届くようにお盆の下に板を重ねておいたりするようにしました。

ゲームをするとき、コントローラーを持つことが出来なくなったので、大きな板を彼の机の上において、その上にコントローラーを置きました。
彼の指の動きも、どんどんと硬くなって行き、手のひらを開くことも出来なくなっていったので、かるく、グーで握った両手のひらを、コントローラーの上に置き、操作しました。
だから、L1ボタンやL2ボタンを押すことは出来なくなりました。

頭を支えることが難しくなったので、彼の姿勢は、どんどん前のめりになっていきました。
その姿勢によって、筋力を失いつつあった背中は、どんどん曲がっていき、側わんが激しくなりました。

13歳、14歳
たぶんこれが最後になるだろうと、電動車椅子を再び作ることにしました。
背中を真っ直ぐに起こしたままの状態では、頭を支えることが出来ないので、背もたれと頭を支えるヘッドレストにもたれかかるようにして、彼は電動車椅子を操作しました。

手の力が、どんどん弱くなっていたので、レバーを改良し、握らなくても押したり引いたり出来るようにしました。

1年、2年、大変操作しにくい姿勢ではあったけど、息子は頑張ってそれを使いこなし、運動会には、電動車椅子のリレーにも参加しました。

だけど、15歳、16歳
徐々に、自分での操作はきつくなっていき、介助の時間が増えていきました。

すでに、息子は、自分でスプーンを持ったり、フォークを持ったりして、食べ物を食べることが出来なくなっていました。
プラスティックのスプーンでも、もう、持ち上げ、それを口元まで持っていくことが出来なくなっていたのです。

それくらいの、筋力が無いと言うことは、どういうことだか分かりますか?

たとえば。

頭が痒くても、頭まで手を上げることが出来ない。と、言うことです。

頭が痒かったら、誰かに、かいてもらわないといけないのです。

本が読みたくても、ページをめくってもらわないといけない。と、言うことなのです。

くしゃみをするときも、手で口を覆うことができません。

蚊が止まっても、それを払うことができないのです。

健康なひとが、ほとんど無意識で行っているような動作にも、息子には介助が必要なのです。



なぜ、今回、このような話をしたかといえば、遡ること2ヶ月ほど前。
4月にいつものショートステイに出かけ、帰って来た日のことでした。

帰宅後、息子には毎回同じ事を聞きます。
「楽しかった?」
「お風呂には入った?」
「何食べた?」
「おにいさん(ヘルパーさん)は、優しかった?」

「たのしかったよ」
「おふろはいったよ」
「おさかなたべたよ」
息子は、順々にそう答え、その後
「おにいさんはー、ちょっとーきびしかった」と言いました。

「どこが厳しかったの?」そう聞くと、少し考えてから
「むき、かえてーっていったらぁ、がまんしなさいーっていってぇ」

むき、かえて。と、言うのは、息子が就寝中、寝返りを要求するときの言葉なんです。

息子は、もちろん、自分で寝返りをすることはおろか、足の位置を変えることすらできません。
最初に、寝かされた状態で、寝返りをしてもらえるまで、ずっと同じ姿勢でいることしか出来ないのです。

ひとは、眠るときに、自然に寝返りをするのが当たり前です。
そうしなければ、体の血流も悪くなるし、じょく瘡(床ずれ)だっておきかねません。
その、自然と行う行為が自分で出来ないのですから、それをケアするのは、当たり前のことです。
それを、我慢しなさい。と、言われることは、あまりにもひどい。

すぐに夫に話し、息子から詳しく状況を聞き、ショートステイ先に電話を入れ、ヘルパーさんの事業所に注意をしてもらうようにしました。

まぁ、そのときは、何度目かの寝返りの時に、そういわれたとの事で、あまり事を荒立たせないように、注意だけにしておいたのですが。

しかし、コレだけに収まらなかったのでした。

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10 Comments

norori* says...""
ヘルパーさん、息子さんの病状、今の状態を分かってるんですよね?
当たり前の事が出来ず、助けを求めてるっていうのに
我慢しなさいとは、ほんっと心ないヘルパーさんですね。

これだけに収まらなかったって?
他にも息子さんがやだなって思ってる事があるって事?

なんだか。。。
ヘルパーさんの人手不足が原因で、ほんのちょっと
息子さんの要求にこたえれなかっただけなのか
ヘルパーさんの気分なのか・・・

改善されるといいのですが。。。(´;ω;`)
2011.06.03 07:14 | URL | #- [edit]
ゆう says...""
私は老健施設で働いているので、相手はお年寄りだけど、でもちょっと人ごととは思えないお話でした。
私はただの事務員なので直接介護することはないのですが・・・
やっぱり、忙しいから、とか、何度も同じこと言ってくるから、とか、いろんな理由で、ちょっと目に余る状況を目撃することもあります。
「現場にしかわからない状況」っていうのがあるのはわかるのだけれど、やっぱり「それは違うだろ!」って思う事も多く・・・

一時、介護職に就くことも考えてた時期もあって、勉強してた時期もあって、その時に理想と現実の狭間で悩むことになるよって、先生に言われたことがあります。
momeさんのお話の続きがどんなお話なのかわかりませんが、難しい
世界だなって、ホント思います。

医療、福祉・・・
国に、もっともっと力を入れて動いてもらいたいです。
2011.06.03 12:58 | URL | #- [edit]
tomotan says...""
むか~~!!ってしました!!ヘルパーこら!! Helpする人と書いてHelperじゃないですか! 助けなくてどうするの!!

手術の後、まったく動けないのに、立ってトイレに行けって言われたのを思い出したァ~!! 数時間後ですよ。『無理』って言ったら『無理なわけないでしょう、あなたの手術は足じゃないのよ』って
それで寝たままお尻の下にたらいを突っ込まれて、そのまましろって。 数時間。 その後お尻にたらいのあとがずっとずっとついてました。 寝たままお尻にたらい当ててできるかっつーの。 いるんですよ、弱い物いじめの人って。 ここぞとばかりに何かする人!
息子ちゃんかわいそう!! きっと何もいえないと思ったんじゃないかな!? 本気で腹が立ちますね!!
2011.06.03 13:00 | URL | #- [edit]
ローズキャット says...""
就寝中に寝返りをすることで、
自分で自分の身体の歪みを
調整するんだそうです。

主人が整体をやっているので、
よくそういう話を聞きます。

ヘルパーさんについて、なんと言っていいのか・・・。

言葉でうまく表現できません。

すみません。

追伸:
momeさんのブログを参考にして、
拍手ボタンをつけることにしました。
2011.06.03 23:48 | URL | #- [edit]
ミキ says...""
ヘルパーの仕事をめざす人は介護する相手の人が今どういう状態なのかを体で体験して欲しいですね。頭では理解しているつもりかもしれないけど、実際に体が動かないということがどういうことなのか忘れちゃうのかな。
うちも父が筋肉が骨に変わってしまって動かなくなる病気なんですけど、病院の話を聞いていると本当に患者のこと考えてるのか驚く話を聞きます。病院やヘルパーさんの患者さんへのメンタルな部分のケア、遅れてると感じます。
2011.06.04 04:06 | URL | #- [edit]
mome says...">to norori*さま"
基本的に、高齢者の介護を学んでヘルパーになることが多いので、障がい者のことは、あまり良く分からない人が多いのも事実なんですよねぇ。
それに、障がいって、かなり多種多様なので、やっぱり経験がモノをいうような気がします。

ショートステイサービスは、ヘルパーと利用者のマンツーマンなんですね。
だから、息子につきっきりのヘルパーさんがひとりいるわけなので、人手不足にはならないはずなんです。
病院や施設なんかだと、なかなか手が回らなくて。。ということもあると思うんですけど。

やっぱり、ヘルパーさんの仕事に対する意識の問題なんでしょうねぇ・・。
2011.06.05 16:28 | URL | #- [edit]
mome says...">to ゆうさま"
難しい問題なんですよね。
施設や病院だと、慢性的な人員不足もあったりして、なかなか思うようなケアが出来ないこともあると思います。
志はあっても、上の方がダメだとどうしようもなくなる場合もあるようですしね。
そのあたり、理想と現実の間で、悩む方も多いみたいですね。

今回のように、うちが受けているショートステイサービスは、マンツーマンなので、忙しくて手が回らない!なんてことは、まず無いわけなので、まぁ・・眠かったんでしょうね・・。
でも、夜の時間帯も契約に入っているわけですから(しかも報酬が良い)そこはきっちり仕事をしてもらわないと困りますよねぇ。

ほんと、国にもっときちんと体制を整えるように動いて欲しいです。
2011.06.05 16:34 | URL | #- [edit]
mome says...">to tomotanさま"
それもひどい話だなぁ・・・。
以前わたしが手術をしたときは、わりと良い病院で、おトイレはカテーテルが突っ込んであったんですが、わたしはそれがイヤで「自分で歩いてトイレにいくーー」と騒ぎ、「まだ、ダメですよっ!!」と止められても「ぬけーーー」と騒いだ迷惑患者でしたが・・(笑

やっぱりねぇ。
何か言い返すことが出来る人に対してと、何も言えない子に対してって、やっぱり違うじゃないですか。
うちも、こうして親に話してくれたから良かったけど、いえない子は、もっとたくさんいるはずなんですよね。
そういうひとに、言葉の暴力っていうのかなぁ、そういうことをするのは、やはり、ヘルパーとしても、ひととしてもダメですよね。
本当に、不安になる出来事でした。
2011.06.05 16:43 | URL | #- [edit]
mome says..."Re: タイトルなし"
そうなんですよ。
寝返りってとっても大事な行為なんですよねぇ。
ひとは眠っているときに、何度も何度も無意識で行うんですから、それが自分で出来ないのなら、やってあげるしかないわけで。
それも大事なケアなんだって自覚が無かったんでしょうねぇ。

拍手ボタン、いいですよー。
お友達のブログとかに言っても、時間が無くてコメントできないときとかは、思いっきり拍手ボタンを押すことにしています(笑
2011.06.05 16:46 | URL | #- [edit]
mome says...">to ミキさま"
体感実習は良いですよね。
経験を積んでいけば、いろんなイレギュラーなことが分かるようになると思いますが、まだまだ、そういうケースに対応出来ない人も多いですねぇ。
なかなか人の身になって、考えたりすることは難しいですが、そのための資格なんですしね。

病院なんかでは、やはり慢性的な人員不足もあって、流れ作業というか、細かなケアを望むのが難しいみたいですよね。
でもやっぱり、それもどうなのかなぁ・・って思います。
もうちょっと、ヘルパーなどの質の向上をはかって欲しいですよねぇ。
2011.06.05 16:51 | URL | #- [edit]

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